飛行中も医療用酸素が必要な方が飛行機に乗るときは、航空会社への事前の申し出と、書類の準備が必要です。
この記事は、肺がんだった父を、医療用酸素ボンベを使って飛行機で遠方に連れて行った僕の実体験と、航空会社などの公式の案内(2026年10月19日に確認)をまとめたものです。
僕の父は一人暮らしで、病院にも行きませんでした。いざ受診したときには、肺がんの「ステージ4」でした。
咳が激しい、少しの運動で息があがるなど、気になる症状があるときは、早めに受診してください。周りの方に気になる症状がある場合も、受診を勧めてあげてください。
この記事は、医療や航空会社の最終的な案内ではありません。飛行機に乗ってよいかどうかは、主治医が判断します。必要な書類や条件は、航空会社・路線・機器によって違い、変わることがあります。予約の前に、必ず航空会社に確認してください。この記事で公式の案内を確認したのは、天草エアライン・JAL・ANAだけです。
先に知っておきたいこと
- 医療用の酸素ボンベは航空輸送上の「危険物」にあたりますが、医療用に限り、条件つきで認められています(JAL・ANAの案内)
- 機内で使うには、航空会社所定の診断書が必要です(JALは、主治医の記入を求めています)。診断書の期限を、搭乗日を含めて14日以内としている会社があります(天草エアライン・JAL。天草エアラインの条件が酸素ボンベの診断書にも同じかは、確認できていません)
- ボンベの場合は、ボンベの仕様を確認する書類(JALは仕様証明書、ANAは仕様確認書)も必要です。携帯型の酸素濃縮器(POC)の場合は、機種とバッテリーの確認が要ります
- JALは国際線の米国発着路線(グアムを含む)、ANAは米国発着路線で、自分の酸素ボンベを持ち込むことも預けることもできません。ほかの航空会社は、この記事では確認していません
医療用酸素ボンベと、携帯型酸素濃縮器(POC)の違い
この記事で書いているのは、酸素ボンベを使った僕の体験です。機内で使える医療用の酸素の機器には、もうひとつ、携帯型酸素濃縮器(POC)があります。JALとANAの案内では、次のように分かれています。
酸素ボンベ

- 航空会社所定の診断書に加えて、ボンベの仕様を確認する書類が要ります(JAL:酸素ボトル仕様証明書、ANA:酸素ボンベ仕様確認書)
- ボンベの大きさ・重さ・検査の条件があります(下の「ボンベの条件」)
- 機内で使うボンベの貸し出しがあります。ANAは有料・要予約です。JALにも貸し出しサービスがあります(料金・申込の条件は、各社で確認してください)
携帯型酸素濃縮器(POC)
- 機内で使うには、主治医が書いた、航空会社所定の診断書が必要です(JAL・ANA)
- メーカー名・製品名・型番・バッテリーの種類を、航空会社に伝えます(JAL)。ANAは、使用できる機種の例の一覧と、FAA(米国運輸省航空局)の基準を満たすラベルのある機種を、使用できるとしています
- ANAは、機内のシート電源は使えないとしています。バッテリーは、飛行時間の150%を目安に持つよう案内しています
- 外付けバッテリーは、機内に持ち込める規格が国土交通省によって決められています(ANA)
酸素ボンベの操作は医療行為にあたるため、客室乗務員は手伝えません(JAL・ANA)。ANAは、POCの操作も同じとしています。ご本人か、お付き添いの方が操作します。
液体酸素・携帯酸素缶・O2パックは、持ち込めません(JAL・ANA)
医療用の酸素ボンベとは別のものとして、スポーツ用などの携帯酸素缶・O2パック・液体酸素があります。JALとANAは、これらを、機内に持ち込むことも、荷物として預けることも、受けつけないとしています。JALは、医療用の酸素ボンベでも、液状のものは不可としています。
医療用酸素ボンベを飛行機に持ち込む前の準備
お手本がないと、すごくややこしい準備の手順です。以下、僕が実際にやったことと、航空会社の公式の案内を、分けて書きます。僕のときは「天草エアライン」に協力していただき、無事にフライトできました。
僕の体験は、この記事を公開した2024年4月より前のもの(コロナ禍の頃)です。今の条件とは違う場合があります。
1.主治医への相談
まず、飛行機に乗って移動してよいかを、主治医に確認してください。
病状によっては、飛行機での移動は体への負担が大きいことがあります。医療用酸素ボンベを使えば大丈夫、というわけではありません。ご本人が「大丈夫」と言っても、主治医の判断に従ってください。周りが見ているより、ご本人が思っているより、体への負担は大きいかもしれません。
僕の場合は、医師の許可を得て医療用酸素ボンベを使い、飛行機に乗って遠方に連れて行くことができました。
しかし後から聞いた話ですが、医師から本人へ「行けば余命が半分になる」と告げられていたそうです。これは、僕が後から聞いた父の場合の話で、誰にでも当てはまる見込みではありません。
本人は、それでも行きたかったのです。僕は亡くなった後に聞かされ、最後の親孝行ができたと思いました。
医師の許可を得たのであれば、どんなリスクがあっても、本人の意思を尊重してあげることが大事だと、僕は思います。これは僕の考えです。移動してよいかどうかの判断は、本人・ご家族・主治医でよく話し合い、主治医の判断に従ってください。
2.酸素ボンベのメーカーへの事前連絡
次に、飛行機で移動したい旨を、酸素ボンベのメーカー(業者)に連絡します。JALの案内では、ボンベの仕様証明書は、酸素ボンベのレンタル業者が発行するものとされています。
在宅のときは酸素供給機器で、出かけるときは医療用酸素ボンベで、と使い分けている方もいると思います。
ボンベの持つ時間は、容量と使う流量で決まります。例えば、300リットルのボンベで酸素を連続して流す場合、流量が毎分0.5リットルで10時間、毎分3リットルで1時間40分ほどです。長い移動や宿泊になると、普段の予備の本数では足りないことがあります。
ですので、「飛行機で遠出をする」旨を先にメーカーへ伝え、必要な本数を確保します。必要な量は、主治医・メーカーと相談して決めてください。
3.航空会社への事前連絡
チケットを予約する前に、まず電話で問い合わせてください。天草エアラインは、ご予約の際に、病気やけがをされているお客様は必ず申し出るよう案内していて、医療用酸素ボンベの持ち込み・吸入を希望する場合は、あわせて申し出るよう書いています。
医師の許可があればそれで済む、というわけではありません。酸素ボンベは、航空輸送上の「危険物」にあたり、医療用に限って航空輸送が認められています(JAL・ANAの案内)。火気の近くに置かない・使わないなど、メーカーや業者の取扱いの説明に従い、日ごろから注意してください。
なお、ANAの案内では、ANAの便名で予約した、ほかの会社が運航する共同運航便(コードシェア便)は、運航する会社の規定が適用されます。予約するときの会社と、飛行機を運航する会社が違う場合は、運航する会社にも確認してください。
航空会社に出す書類
主治医の診断書
機内で医療用酸素を使う場合は、診断書が必要です。様式と提出方法は航空会社に確認して、主治医に書いてもらいます。僕のときは、かかりつけ医に伝えたら、すぐに書いてくれました。
診断書は、発行日に条件があります。前もって早い段階でもらえばよい、というわけではありません。僕のときも、搭乗日から何日以内に発行されたものでないとだめ、という条件がありました。よく確認してから動いてください。
今の案内では、天草エアライン(病気やけがの方の診断書)とJALが、搭乗日を含めて14日以内に作成したものとしています(JALは、ストレッチャーを使う場合は10日以内)。JALには、体調が安定している方が一定の期間に何度も搭乗するための、診断書の有効期限の制度もあります。診断書の期限は、会社ごとに違います。天草エアラインの条件が酸素ボンベの診断書にも同じかと、ANAの診断書の期限は、この記事では確認していません。
酸素ボンベ仕様証明書
実際に使った用紙です。

僕のときは、天草エアラインの用紙を、メールで受け取って自分で印刷しました。メールが使えない方は、あらかじめ搭乗予定のカウンターで案内を受けてください(当時の手順です。今の手順は、航空会社に確認してください)。
この用紙は、手元に置いて、酸素ボンベのメーカーの方に記入してもらいました。自分では書きません。僕が受け取った天草エアラインの用紙には、次のような項目がありました。
- 使用者の名前、搭乗予定の便名と日付
- メーカー名、製品名、サイズ(高さ・直径)、1本あたりの総重量
- ボンベの番号と、容器の耐用証明の年月日
- 機内に持ち込む本数と、預ける本数
- 呼吸同調器・流量調整器(デマンドバルブ)を使うかどうか
用紙には、「座席の下に収納できない大きさのものは、ボンベ用の座席を確保するため、別途料金がかかることがあります」という注意書きもありました。書式は会社ごとに違い、変わることがあるので、最新の用紙は、航空会社で受け取ってください。
以上の2点(診断書と仕様証明書)を、航空会社に提出しました。JALは、診断書を出発の48時間前までにFAXで送るよう案内しています。提出の方法と締め切りも、会社ごとに確認してください。
ボンベの条件(JAL・ANAの案内)
- 医療用のガス状の酸素であること(液体のものは不可)。ANAは、ボンベに「O2」の表示があることを確認項目にしています
- 日本では、高圧ガス保安法にもとづく容器の耐用証明(検査合格の刻印)があり、3年(一部は5年)ごとの耐用証明検査を受けていること
- 高さ70cm・直径10cm程度までで、1本あたりの総重量が5kg以下であること(ANAは、航空法にもとづく必須の条件としています)
どのボンベが条件に合うかは、ボンベのメーカー・業者と、航空会社に確認してください。
天草エアライン・JAL・ANAの案内のちがい
2026年10月19日に、各社の公式ページで確認した内容です。ここに書いていないことは、確認できていません。
天草エアライン
- 病気やけがのある方は、診断書と同意書が必要で、原則として医師または看護師の同伴が必要(酸素ボンベを使う方にもこの同伴の条件が当てはまるかは、確認できていません)
- 診断書は、搭乗日を含めて14日以内に作成されたもの(病気やけがのお客様の条件。酸素ボンベの診断書にも同じかは、確認できていません)
- 医療用酸素ボンベの持ち込み・吸入を希望する場合は、予約のときに申し出る
- 予約センター 0969-34-1515(9:00〜18:00)
天草エアライン「ご予約時のお願い」(ページに日付の表示はありません)
JAL
- 航空会社所定の診断書と、酸素ボトル仕様証明書を、事前に提出。仕様証明書は、当日も原本を見せる
- 診断書は、搭乗日を含めて14日以内(ストレッチャーは10日以内)。診断書の送付の締め切りは、出発の48時間前
- 自分のボトルの持ち込みは条件つきで可。国際線の米国発着路線(グアムを含む)は、自分の酸素ボトルを預けることも持ち込むこともできない
- 医療用酸素ボトルの貸し出しサービスがある
JAL「酸素ボトルをご利用のお客さま」、JAL「診断書について」
ANA
- ANA所定の診断書と、酸素ボンベ仕様確認書。事前に「おからだの不自由な方の相談デスク」へ連絡
- 自分のボンベは、一部の路線を除き、機内に持ち込める。米国発着路線は、貸し出しのみ。中国各地発の路線でも、自分のボンベの持ち込み・お預けは禁止
- 貸し出しは有料で、要予約。貸し出しは機内のみで、空港内で使うボンベは、自分で手配する
- 日本国内線と国際線で、内容が異なる項目がある
国際線は、出発する国・乗り継ぐ国の法令や、航空会社の規定でも条件が変わります。ANAは、酸素ボンベの取り扱いは各国により異なる場合があるとしています。
空港での手続き
空港に着いてから搭乗するまでの流れを紹介します。僕のときは、複雑な事前の準備が終わっていたので、あとは空港スタッフの案内に従って、搭乗に進みました。
ただし、通常の搭乗との違いがありますので、ご覧ください。
チェックイン時の申告
空港のチェックインカウンターで、医療用酸素を使うことを申告し、必要な書類を提出します。
あらかじめ連絡してあったので、航空会社のスタッフも把握してくれていました。案内に従って、搭乗までの時間を過ごしました。
僕の場合は、車椅子を使っていましたので、航空会社が用意した搭乗用の車椅子に乗り換えました。
JALの案内では、チェックインは、スペシャルアシスタンスカウンターなどの有人カウンターで行い、仕様証明書と酸素ボンベの確認に時間がかかることがあるので、時間に余裕をもって来るよう書かれています。ANAも、事前に申告していても、当日はカウンターで目視の確認をするとしています。
保安検査
僕のときは、指示に従い、酸素ボンベを含むすべての医療機器を、保安検査に通しました。個別の検査が必要になることがあるので、余裕をもって手続きに臨みます。
JALの案内では、保安検査は、ほかのお客さまと同じ内容・方法で行われ、障がいを理由に簡略化したり、優先したりすることはできません。ご心配なことは、予約のときか、当日の空港カウンターで伝えるよう案内されています。
荷物として預けるボンベは、スタッフの方に渡して、預けました。
搭乗ゲートでの確認
搭乗の前に、もう一度、航空会社のスタッフと酸素の使用を確認し、席の近くに酸素ボンベを安全に置けるよう手配してもらいます。
JALの案内では、酸素ボトルは、原則としてお客さまの前の座席の下に、横にして収納します。十分な長さのチューブを用意してください。座席の下に収納できないときは、座席に固定するために、追加で座席を購入することがあります。ANAは、安全のため、非常口座席には座れないとしています。
僕のときは、通常の搭乗ゲートではなく、別のルートで搭乗しました(車椅子なので、飛行機まで車で移動)。
飛行機まで移動する車に乗ったあとは、車椅子が倒れないよう固定されます。

身動きが取れないので、本人はつらいと思います(コロナ禍でしたので、マスクも苦しそうでした)。
飛行機の乗り継ぎがありましたので、空港スタッフの数人がかりで対応していただきました。非常に助かりました!
機内で
酸素ボンベの操作は、ご本人かお付き添いの方が行います。ANAによると、機内にあらかじめ搭載されている酸素ボンベは緊急用で、通常は使えません。
注意点
- 乗り継ぎ先や旅行先の国・空港の規制も確認する(国際線は、国と航空会社で条件が違います)
- 予約した会社と、飛行機を運航する会社が違うこと(共同運航便)がある。運航する会社の規定が適用される
- 酸素ボンベの保管や取り扱いは、メーカー・業者の説明書に従う
- 機内で使う酸素の量(毎分何リットルか)は、主治医が診断書に書く(JALの診断書の項目)
- 操作に慣れておく。機内では、乗務員は操作を手伝えない
とにかく、前もっての準備は、簡単そうで大変です。書類や連絡に抜けがあると、搭乗できないおそれがあります。早めに確認しましょう。
よくある質問
- 自分の酸素ボンベを、飛行機に持ち込めますか?
-
航空会社と路線によります。JALとANAは、条件を満たすボンベを、事前の手続きのうえで持ち込めるとしています。ただし、JALは国際線の米国発着路線(グアムを含む)、ANAは米国発着路線で、自分のボンベの持ち込みも、預けることもできません。ANAは、中国各地発の路線でも禁止としています。ほかの航空会社は、この記事では確認していません。予約する前に、航空会社に確認してください。
- 携帯型酸素濃縮器(POC)なら使えますか?
-
JALとANAは、機内で使えるとしています。どちらも、主治医が書いた航空会社所定の診断書が必要です。JALは、メーカー名・型番・バッテリーの種類を伝えるよう案内しています。ANAは、機種の条件(使える機種の例の一覧と、FAAの基準を満たすラベル)、機内のシート電源が使えないこと、飛行時間の150%を目安にバッテリーを持つことを案内しています。航空会社によって条件が違うので、機器のメーカー名・型番を伝えて、確認してください。
- 診断書は、いつまでに取ればよいですか?
-
会社ごとに違います。JALは搭乗日を含めて14日以内で、送付は出発の48時間前までです。天草エアラインは、病気やけがの方の診断書を14日以内としています(酸素ボンベの診断書に同じかは、確認できていません)。予約のときに確認してください。
- 保安検査は、簡単にしてもらえますか?
-
JALの案内では、障がいを理由に保安検査を簡略化することも、優先することもできません。ほかのお客さまと同じ内容・方法で行われます。時間に余裕をもって、空港に行ってください。
- 機内で、客室乗務員に酸素の操作を頼めますか?
-
頼めません。酸素ボンベの操作は医療行為にあたるため、客室乗務員は手伝えません(JAL・ANA)。ANAは、POCの操作も同じとしています。ご本人か、お付き添いの方が操作します。
- 飛行機に乗ってよいかどうかは、誰が決めますか?
-
主治医が判断します。この記事は、その判断に代わるものではありません。心配なときは、主治医・酸素ボンベのメーカー・航空会社に、相談してください。
公式の案内(2026年10月19日に確認)
- 国土交通省「機内への持込み、お預け手荷物に制限がある品目について」(航空会社によって、より厳しいルールがある場合があるため、各航空会社の指示に従うよう案内されています)
- 天草エアライン「ご予約時のお願い」
- JAL「酸素ボトルをご利用のお客さま」/JAL「診断書について」
- ANA「医療用酸素ボンベをご利用のお客様」/ANA「酸素濃縮器(POC)をご利用のお客様」
上記以外の航空会社(スカイマーク・ソラシドエア・スターフライヤーなど)は、この記事では確認していません。利用する航空会社の案内を確認してください。
まとめ
医療用酸素ボンベを飛行機に持ち込むには、主治医・ボンベのメーカー・航空会社への事前の連絡と、書類の準備が必要です。条件は、航空会社や路線、機器によって違い、変わることがあります。
何より、命にかかわる移動です。緊急のときは、周りの手助けを求める心がけが大事です。
この記事が、誰かの役に立てれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。








